ドイツw杯でメダルをもらった日本人 廣島禎数さん

先日、地域の集まりでJリーグ及び国際副審、
廣島禎数さんの講演を聞く機会があった。

ほとんど周知されていない、かなり身内ばかりの集まりなのに
サッカーファンならかなりレアな裏話を私が聞かせてもらって
ええんかいなと思いながらの1時間半でした。
いわゆる体育会系の男気な方でありました。

サッカーの審判は3人だそうだ。(それすら知らない私)
主審は笛を吹く一番目立つ人。カードとかも出す。
副審は二人いて、いわゆる線審でしょうか。
ゴール際のきわどい部分も担当するので
主審も副審もどちらも重要な仕事をしている。

でもまあみんな、笛を吹きたいじゃないですか。
事実、以前のW杯までは世界中の主審が集められて審判をしたらしい。しかし、普段は線審をしない人が線審をするものだから、審判が的確に裁くことができない事態も多かった。

そんな訳でFIFAは主審と線審は別々に選抜することにした。それでもフランスW杯では審判の精度があまりよくなかったらしい。またまた考えたFIFAはドイツW杯からは「審判もチーム制にする」ということを決めた。
あらかじめ世界各地区からチームメンバーを選抜し、ワールドクラスの審判を彼らにやってもらい採点する。その中から優秀なチームをW杯メンバーとする、というもの。

日本からW杯に出場した審判はこれまでにもいた。上川主審もその一人。
アジア地区でもいくつかの審判チームが作られるが、これまで同じ国から2人の審判が選ばれることはなかった。上川さんが主審で本命ならば副審で優秀な(Jリーグで何度も最優秀副審の賞をとっている)廣島さんはどれだけ優秀であっても選ばれることがない。

ショックを受けた廣島さんだが、ここで投げやりになってはいけないと目の前に与えられた仕事をきっちりやろうと決心されたそうだ。W杯に出られないからといい加減な仕事をすれば、所詮それだけの人間になってしまう。どうであってもベストを尽くすこと。

そうやって励んでいた廣島さんは、形よりも質をとったFIFAの裁量で無事、上川主審チームに副審として選ばれる。その後もいろんな問題が起こり、その度に悩んだりあきらめたり。
でも、いろんな追い風も吹いてきて彼はとうとうドイツへ行くことになる。

ここで驚くべき事実を一つ。
実は彼は公務員。府立高校の教員である。学校の先生が、有給を使ってとはいえ、そんなに休めるか?しかも私立ではなくれっきとした公立高校の体育教師だ。しかし、彼のためにと現場の先生方が配慮をしてれた。普通の会社だったら辞めさせられているに違いない。

一方、上川さんはプロである。どうして廣島さんはプロにならなかったのかというと、実は線審のプロフェッショナルへの道がないそうなのだ。主審はプロになれる。でも線審はない。なんだか訳わかんない世界だわ。

さて、休職してまでつかんだW杯。
W杯では審判の人たちも戦っていた。コンディショニングコーチがつき、それぞれ与えられたトレーニングをする。そして審判の評価が悪いものは予選落ちで帰される。ベストな審判を上の試合(決勝、準決勝、3位決定戦)で使うために。

彼らは予選での審判はとても評判がよかった。きっと、と決勝トーナメントでのゲームを待っていたが来ない。ここでふと感じた思い。アジア人に決勝トーナメントをまかせられない、ということか。

これはかなり濃厚で、現実味をおびた思いだった。彼らはほとんどあきらめていた。99.9%という風に廣島さんは表現していた。しかし奥さんからのメールで気持ちを切り替えたという。
「みんながそこへ行きたいと思っている場所にあなたはいる。
そこでやれるだけの仕事をしてください」というような言葉だったと思う。

その後、ミーティングで上の試合のスケジュールが発表された。3位決定戦は上川チーム。上川さんはいったん緊張を解いていた状態だったので、ふぅっと長いため息をもらしたという。隣に座ってそれを見ていた廣島さんはテーブルの下でガッツポーズをしたらしい。後に上川さんより「元気なおっさんやなあと思いましたわ」と言われたそうだ。

3位決定戦では上川さんも廣島さんも高評価だった。「そのときにもらったメダルです」といってメダルを見せてくださった。W杯では上の試合に出場した審判も選手と同じようにメダルをもらえるそうだ。日本人で初めてもらったW杯のメダル。

大学一年で現役選手としての限界を知り、指導者になる決心をする。そのために審判資格をとり、審判を時々しているうちに審判としての道が開かれていく。

どうせならW杯へ行こうという夢を持つ。W杯のピッチで笛を吹こうと思う。Jリーグでは副審で入ったけれど、そのうちに主審に転向する予定だった。しかし時代は「大きな主審化」。世界レベルでは190cm以上の選手がごろごろしている。そんな選手が抗議してきても威圧できる体格がないといけない。FIFAも体格の大きな主審をセレクトするようになっていた。
ここで「W杯で笛を吹く」という夢は挫折する。

しかし気持ちを切り替える。「背が低いのは自分のせいじゃない。努力してもどうにもならない。そんなことでくよくよしても、しゃーない」副審としてW杯へ行くんだという目標を持った。

彼の話を聞いていると、努力すべき事、考えるべき事、そしてあきらめるべき事の選択が素晴らしいと思った。

彼自身がまとめていたことは「僕は運がとてもよかった。しかしその運をつかむまでは自分で出来る努力は一生懸命やった」ということ。

w杯の審判選考をしていた2005年、FIFAから電話があった。「オランダでやる試合の審判チームが不合格になった。今からオランダに来てくれ」という仰天な内容だったが学校の先生である彼が即行オランダまで飛べるわけがない。もしかしたら選抜されるチャンスだったかもしれないが、そういう風にあきらめた出来事はいくつもある。

審判チームは3人だから他の人がだめだったらみんな不合格になる。実際そんな憂き目にもあった。それは考えても仕方ないことである。しかし人の悩みの多くが、その「考えても仕方ないことをあきらめ切れずにくよくよする」ことなのではないかと思う。

人生の教訓としてよいものを受けたと同時に「日本のプロ野球審判界も、FIFAみたいに真剣にトライ&エラーを繰り返してでもよりよい審判を追求しているだろうか」ということだった。

すいませんねえ、矛先がそっちに向かっちゃって。
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Commented by 卯月 at 2007-03-07 08:40 x
例の夕方の関西ニュースで時々広川氏のことがレポされてましたね。すばらしい講演だったようで、こうしてご紹介くださり感謝しています。
--努力すべき事、考えるべき事、そしてあきらめるべき事の選択が素晴らしいと思った。…人の悩みの多くが、その「考えても仕方ないことをあきらめ切れずにくよくよする」ことなのではないかと思う。--
みいさんのご感想と合わせて忘れずにいようと思います。
上川氏は、W杯中に突然眠れなくなって、初めての経験であわてた、というようなことを専門誌のインタビューで言っておられました。広川さんの肝っ玉あってこそ、あのチームプレイも成功をおさめたのかな、とみいさんの記事を読んで改めて思いました。
桑田投手の記事もよかったです。ありがとう。

Commented by okaeri110 at 2007-03-07 13:33
あららぁ最近夕方のNHK見てないので見逃してしまいました>_<
私みたいなサッカー音痴が聞いて申し訳なかったような講演でした。講演はよくなさっておられるようなので、卯月さんもどこかでチャンスがあるといいな、と思います。ちなみに今回はわたし、無料でした(笑)

J2、11日仙台と試合ですね!この日はお客様が来られるので行けないのですが、応援してます。トムのお友達のパパさんは(奥さんと友達なんですが、そう書くと面倒なことになりそうなんで子どもさんと友達ってことにします 爆)卯月娘さんの予想によると移籍のボーダーラインにいたのですが、残留されております♪←どなたかわかっちゃった?^^ゞ

Jリーグが開幕されて、卯月さんもいよいよ始動ですね。私も日程表を見てにまにまする季節到来です。またどうぞよろしくお願いします^^
by okaeri110 | 2007-03-01 13:00 | スポーツウォッチング | Comments(2)

今はとにかく、猪突猛進、決して後ろを振り向きませんのだ


by okaeri110
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